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先見の明
2025年09月17日
東京よりも10℃ほど気温が低い。先週、JBCアメリカ事務所移転のため、カリフォルニア州サンディエゴから210Km北のLAに引っ越した。

移動日、私がまず出向いたのは、北米2万3000カ所以上にオフィスを構え、192,100台余のトラック、137,500を超えるトレーラー常備する『U-Haul』最寄りの支店だ。この数カ月間、同社の倉庫に預けていた荷物を2時間ほどかけて、借り受けたばかりの2トンサイズトラックに積み込む。

U-Haulは80年にわたり、自らの手で引っ越しをする人に運搬車や道具をリースしている。第二次世界大戦終了後、片道のみの移転を自身の手でやりたい人が全米中に存した。同社の創立者もそうだった。

1945年夏、海軍を除隊した29歳のサム・ショーンと妻のアンナ・メアリー・カーティ・ショーンは、LAからオレゴン州ポートランドへ家財道具を運ぶため、トレーラーを借りようと考える。だが、まったく見付からなかった。残念ながら2人は、日用品や衣類しか運べなかった。
そこで思い付いたのが、乗り捨て可能な引っ越し用運搬車の提供だった。夫婦は、自身の体験に基づいてニーズを確信し、即、行動を起こす。こうして誕生したのがU-Haulである。1945年末までに、ポートランド、ワシントン州シアトル、カナダのバンクーバーのサービスステーションには、4フィート×7フィートのオープントレーラーが30台置かれた。

今回、自分の荷物をトラックの荷台に運ぶため、何往復もしていると、鍵を自分の車に残したままドアを閉めてしまった男性の姿を目にした。
「大丈夫かい。何か手伝おうか? AAA(日本のJAFのような存在)に電話したら?」
声を掛けると、「見てくれよ。スマホも中にあるんだ」なる回答だ。
「俺のスマホで電話するといい」そう言って差し出したが、彼は、「いや、もうチョイで何とかなりそうなんだ」と応じながら、助手席から針金を突っ込んでいた。
「どうしようも無かったら言ってくれよ」
彼は私の言葉に頷き、作業に集中した。

積荷が終わり、LAに向けてトラック運転席に座った時、彼の姿はなく、白い車のトランクが開かれていた。
「良かったな、オッサン。俺ももう出発だよ」
彼の車、そしてメキシコとの国境の街に別れを告げた。

LAまでの道のりは混んでいた。途中何度も、ニーズに応えるビジネスを思い付いたショーン夫妻の先見の明に唸らされた。新天地は都会だが、空の青さを感じる。
林 壮一 ジェイビーシー(株)広報部 / ノンフィクション作家
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